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トカラに咲く悲しき高貴な花、タモトユリ トカラの北の玄関口、口之島。この島の西側、人が容易に近づく事が出来ない烏帽子崎断崖地に、それはそれは美しい花が群生しています。

その美しい花の名はタモトユリ。

学名を「最も高貴なユリ」という意味を持つLilium nobilissimumと言います。

普通のユリは花弁を下に向けて咲くのに対し、タモトユリは上品な香りを辺り一面に振りまきながら天を向いて純白の花を咲かせます。

交通の便が非常に悪いトカラは昔から貧しい場所でした。

高度成長経済もトカラには無縁、いわば日本に忘れられた島です。トカラは戦後沖縄や奄美群島とともにアメリカの統治領となり、1952年に日本に復帰します。その復帰直後に大阪市立自然科学博物館がまとめた報告書には、「島民は骨と皮の餓死直前の状態で島を死守している」とあります。そんなトカラの貧しさに目を付けた海外の園芸業者が、ユリの球根を1球15,000~20,000円もの高値で買い取ると申し出ました。

貧しいトカラの島民は当然その申し出を受け、島中の若者が断崖に咲くタモトユリの球根を掘りにいきました。

言うまでもなくタモトユリは乱獲され絶滅への道を進みます。タモトユリは栽培が難しいため、簡単に増やすこともできない。

鹿児島県はあわてて53年に天然記念物に指定しますが、時既に遅し。

球根はあらかた掘りつくされ、国内はもとより海外の業者の手に渡っていました。

海外に渡ったタモトユリはカノコユリとヤマユリの交配種と掛け合わされ、その結果生まれたのがプレゼントとして人気の高いカサブランカです。しかしカサブランカの母とも言えるタモトユリは現在既に絶滅しており、現在口之島に咲いているタモトユリは純血ではなく他品種が混ざっています。

人々を魅了する美しさを持ってしまったが故に身を滅ぼしてしまったタモトユリ。

断崖に咲くのは、自分の身を破滅させた人間を拒むためでしょうか。

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